公園の草木

公園の草木の観察記録を書いています。

尾道「千光寺(クヌギ、トウネズミモチ、ハゼノキ、放浪記の石碑、玉の岩、奇岩三重岩)、林芙美子像」

1217日(月)
 
 寺巡りをして、千光寺ロープウェイ乗り場へ着いた。天気があまりよくなく、時刻も午後2時を過ぎていたので、上へ昇る人少ないだろうと思っていたが、ロープウェイが出発する時刻になると、続々と多くの人が乗り込んで、ロープウェイは満員になった。約3分すると、ロープウェイは頂上へ着いた。
ロープウェイを降りると、右側に葉が褐色に染まっている樹が沢山見えた。この樹は以前調べていたので、クヌギと分かっている。太陽の陽が出ていれば、ここは輝く黄金の世界になることが伺える。
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褐色に染まったクヌギ

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展望台から見たクヌギ
 
 展望台から向島方面を見ると、瀬戸内海が河のように見えた。生憎の天気だが、遠くの島々が霞んで見える。細かく、変化にとんだ地形が情緒的で、新しい文学や絵画が生まれてくる素養が準備されている。志賀直哉の暗夜行路、林芙美子の放浪記などの一節はここが舞台になっている。
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河のような瀬戸内海

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河のような瀬戸内海
 
 展望台を下り、山道を下り始めると、黒味を帯びたブドウのような果実が見えた。褐色に染まった。葉の中にこの果実を見ていると、「これは何の果実なのか」と不思議に思った。しかし、よく見ていると、この果実は緑色の葉をつけた枝についていた。この枝の葉は対生で、基が丸みを帯びていた。その形を見て、これはトウネズミモチの果実と分かった。
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 句碑などを見ながら、暗い山道を下りて行くと、褐色だが、細身の葉をつけた樹が見えてきた。葉はクヌギの葉より細く、奇数羽状複葉をしていた。これはハゼノキではないかと思った。ハゼノキに似たものにヤマハゼ、イヌザンショウがある。ヤマハゼの葉はもう少し幅が広く、イヌザンショウの枝には棘がある。この枝には棘がなさそうだ。
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ハゼノキ

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ハゼノキの葉と果実
 
 「ハゼノキは真っ赤に紅葉するのだが、先程の葉は褐色だった。・・・」と考えながら進んで行くと、その真っ赤に紅葉したハゼノキが見えてきた。手前には緑色の葉をつけたツバキが蕾をつけていた。ハゼノキとツバキの色合いが綺麗に映っている。
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ハゼノキとツバキの色合い
 
 巨岩が見え始めてきた。その1つに林芙美子の放浪記の一節が刻まれていた。名文である。

「海が見えた 海が見える 五年ぶりに見る尾道の海はなつかしい・・・」

 名文は、難しい言葉を使わず、有りのままの出来事を、巧みに表現している。「惹きつけられる名文だなぁ」と思った。
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放浪記の石碑
 
 尾道の山は巨岩が多い。下記の資料によると、「県南部を東西に延びる広島花崗岩である」と説明されている。宮島の弥山でも花崗岩の巨岩が見られたが一連した花崗岩と思える。千光寺の境内には玉の石と名付けられた巨岩がある。資料2によると、「周囲50m、高さ15ⅿあり、1000トンを超える千光山寺第3の巨岩です。」と説明されている。資料3では、この玉の岩の伝説について、紹介してあった。読んでみると興味が惹かれた。伝説によると、玉の岩の頂部にあった光る玉は、現在、海の底の沈んでいるという。この伝説から、この山を大宝山といい、寺を千光寺、港を玉の浦と言いようになったそうである。
資料1
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玉の岩
 
 玉の岩のすぐ下のところに、「奇岩三重岩」と表示された岩があった。名と通り。大きな岩が三重になっている。今にも滑り落ちてきそうに見え、この傍を通る時は恐怖感が迫ってくる。
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奇岩三重岩
 
 山を下り、駅の近へ来ると、行李と傘を携え、佇んでいる林芙美子像があった。この像を見ていると、放浪記に綴られた生々しさが現れてくるようだ。
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撮影:1127

  記  平成301212日(木)