公園の草木

公園の草木の観察記録を書いています。

節分追儺式 ―横浜市認定「無形民族文化財」―

24日(火)
 
 外はからっと晴れ渡っている。暖かく、今頃の陽気とは思えない。絶好の節分日和となった。神社へ行くと、女性部の人たちは誰よりも早く来ていた。テーブルには大きな鍋が2つ並んでいる。この中にはおでんが入っている。毎年町会では、女性部の力をかり、このおでんを用意している。女性部の人たちは数日前から材料の買出し、煮込みと各家庭で分担して来てくれた。「いつでもどうぞ」と準備が出来ている。節分の行列が出るのにはまだ相当時間がある。温めてきたおでんを冷やさないために、大きな鍋はストーブの上へかけられた。
  10時近くになると、総代の人や年男・女になる人がやってきて、社務所や神楽殿で着替えが始まった。古式の服を着るので、一人では着ることが出来ない。数人の学生さんが順番に着付けの手伝いをしてくれている。年男・女の人が古式衣装を身につけてくるころには、稚児さんが可愛い衣装を身につけて現れてきた。可愛い姿を見ると、一挙に神社のムードが節分ムードになってきた。
 追儺式の前に、ムードをさらに盛り上げる出来事が出現した。近くの小学校から沢山の児童が社会見学に来た。きちんと整列し、宮司さんの説明をからだで学んでいる。
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宮司さんの説明を受ける児童
 
 11時、本殿で節分追儺式の儀式が行われ、行列の一行は5か町内を目指し、神社を後にした。 第1の町内は新町である。先導車―社名旗―鳴弦―方相氏―宮司―儺人―稚児―役員―氏子総代
の隊列をなして町内を練り歩く。氏子総代の後方は、先ほど神社へ来た小学生が2列に並んで、行列の一行をを盛り上げてくれる。
 各町内の公民館などでは、儀式が行われる。進行役は宮司さんである。
和歌・・・「梓弓 つま引く夜半の遠音にも 鬼追うほどに 春たちにけり」と吟じられる。
つづいて、太鼓の音に合わせて、東西南北に位置した鳴弦によって矢が射られる。
その後に、「鬼は外、鬼は外、鬼は外」の掛け声が掛けられ儀式が終わる。
儀式が終わると、町内の接待で、休憩がとられる。
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新町町内会
 
  新町での儀式を終えた一行はバスで、立町へ行き、ここでも同じ儀式が行われる。新町は賑やかであったが、立町は人が少ない。平日の影響もあるが、下町の人との違いがあるようにも伺える。ここの公民館で昼食をとった。昼食は私たちの町内会の女性部が朝早くからつくってくれたおむすびである。バス1台分の人のおにぎりをつくることは、つくる時間帯を考えると、並大抵のことではない。立町町内会の接待にあずかり、おにぎりを味わった。
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立町町内会
 
 ここからは徒歩になる。稚児さんはバスで移動する。国道沿いに坂を上って一団が進む。慣れない衣装、履物で、動きが少し鈍くなってしまう。昔の人は、この出で立ちでよく行動できたと不思議に思えてくる。坂に坂が続く。
 ようやく浦島丘公民館へ到達する。そこでは町内の役員さん、接待さんが待ち受けていた。入り口のところで、礼の儀式が行われた。
 「梓弓 つま引く夜半の遠音にも 鬼追うほどに 春たちにけり」
 もうこの和歌は、年男・女の人の頭にはしみ込んでいる。「どうぞ」といわれ、一行は接待を受けることになった。入り口を見ると、「浦島丘連合町内会館」の札と「浦島丘青少年会館」の札が下がっていた。入り口が違うかと思ったが、入ると同じ部屋に通じている。接待を受けながら、各町内には町内会館があることが羨ましく思えてきた。残念だが、私たちの町内にはこのような施設がない。
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浦島丘町内会
 
 ここからは次の儀式会場へ徒歩で向かった。稚児さんもよく歩いた。中学校前にあるハイツ浦島丘集会所である。隣の校舎では午後の授業が行われている。休憩時間でないので、生徒の姿はない。ハイツの中を一巡し、入り口へ戻ってきて儀式が行われた。残念だが、ここには町内の人の姿がほとんどなかった。稚児さんも頑張って歩いてきたことを考えると、一向の人には寂しさが残された。ここからは休憩を取らず、待っていたバスに乗って移動した。
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ハイツ浦島丘町内会
 
 陽気が暖かく、アルコールも入ったので、バスの中では一睡し始める人も出てきた。乗っている時間はわずかだったが、会場近くへバスは到着した。
 亀住町にはいくつか保育園がある。ここの園児はこの一行を楽しみにしている。又、一行も小さな園児を見ると、可愛く見え、福豆を沢山あげたくなる。「ふくはうち、ふくはうち」と福豆をまくと小さな手を広げてくる。とることはできないが、楽しんでいることが伺える。しかし、中には驚いて引っ込んでいく園児もいる。一人ひとりの園児がそれぞれ珍しい体験をしたことと思う。神社に近い町内だけあって、沿道に出てくる人も多い。下町の人のよさがわかる。縦横に町内を練り、公民館へ到着した。ここでは町内会長さんをはじめ多くの人が迎えてくれた。会館へ入ると、目の前におしることおそばが用意されていた。昼食から少し時間が空いたので、一行は美味しく召し上がった。ここまでくると、神社まではわずかである。気持ち的にも少し楽になってくる。休憩後、町内をひとまわりして、最後の神社のあるわが町内へ向かった。
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保育園
 
 町内へ入ると直ぐに、「既に神社の境内へ沢山の人が詰めかけている」という知らせが届いてきた。町内の沿道には人は疎らである。多くの人は既に神社へ向かっているので、その様子が理解できる。町内の端まで練り歩き、戻ることになる。町内はそれほど広くないので、横道へ少し入ったくらいで、神社へきてしまう。
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稲荷会町内会
 
 神社の境内は、もう人の山だった。一行が本殿へ向かう道もない状況だった。一行は本殿へ入り、5か町内で追儺式を終えてきた報告の儀式が行われた。
 いよいよ、舞台での儀式になる。舞台へ出ると、もう待ちきれない人でいっぱいである。子供たちは袋の口を大きく開けて、催促している。「まだですよ」といっても、ほとんど聞き取れないようだ。最後の和歌が吟じられた。年男・女にとっても最後の吟じになる。
 儀式を終えた一行は、一旦本殿へ引き上げ、福豆の入った箱を持ってきた。これからが豆まきになる。小さな袋の中に福豆と景品目録が入っている。境内へ集まった人はこの景品も目録が目当てである。いい景品が当たれば、今年はいい福もやってくる。みんなそれを願っている。舞台から沢山の福まめがまかれた。遠くの人へ、近くの人へ、大きく口を開けた袋の中へと短時間であったが、年男・女によって福豆がまかれた。
 賑やかな、賑やかな豆まきであった。活気に満ちた人たちの動きが春を呼んでいる。まだこれから寒くなるが、確実に春が近づいている。今夜から明日にかけて天候が変わってくるらしい。
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境内へ集まった人                   豆まき風景
 
 
  記  平成2623日(月)